2016年4月30日土曜日

第13回 OsiriXで股関節の計測!-(CE、Sharp)-

いつもOsiriX HOW TO!をお読みいただきありがとうございます。

前回は、OsiriXを使ってPET画像表示をしてみました。今回も、実践的な一例をご紹介したいと思います。今回は、すごくメジャーな計測手法である、股関節の種々の計測(CE、Sharp)について触れていきます。

寛骨臼の計測(CEとSharp)


まず、股関節には臼蓋(きゅうがい、または寛骨臼:かんこつきゅう)という部位があります。股関節の大腿骨頭(足の付け根の丸い部分)と腸骨をつなぐ丸い受け部分です。
以下、臼蓋の図を示します。

(Acetabulum:臼蓋、または寛骨臼)

(大腿骨頭と寛骨を分けたときの図)

(X線写真で正面からみた股関節)

この臼蓋を対象とした各種計測が主に変形性股関節症の診断のために利用されています。

計測手法について、もう少し詳しくみていきましょう。

CE角計測:Central Edge Angle


CE角は、1939年にワイバーグ氏により開発された計測角1,2)です。
計測方法は非常にシンプルで、3本の線を引いて、そのうちの2本の線の間の角度を計測するだけです。

3本の線は、

  1. 両側の大腿骨頭中心を結ぶ線(A線とします)を引きます。
  2. 検側の大腿骨頭中心からA線に垂直な線を 頭側に引きます。
  3. そして、これとは別にもう一本、検測の大腿骨頭中心から、臼蓋外縁の接線を引きます。

手順2と3で引いた線の間の角度が、CE角です。

(CE角計測のための3本のライン:Wiberg,1939)
※図中、B-C-Eの角度がCE角

CE角は、成人で25°以上が正常と考えられていますが、性差や年齢(新生児、乳幼児、小児など)でその範囲が変わります。

また、新生児などの骨端が出現する前の症例では、骨端部近位中央(山室氏の発表しているO点)を骨頭中心の代わりとするOE角もあります。

Sharp角:通称Sharp angle(正式には、Acetabular angle)


Sharp角は、その名の通り、1961年にSharp氏が発表しました。正式には、Acetabular angleといい、直訳で臼蓋角です。α角とも呼ばれています。ただ、臼蓋角というと、同じ呼称で別の意味を持つ臼蓋角もあるので、一般的にSharp角(シャープ角)と呼ばれているようです。

シャープ角も、CE角と同様に、シンプルな角度です。2本の線の間の角度を測るだけです。

まず、左右のY状軟骨の腸骨側の下端(Hilgenreiner line)もしくは、左右のPelvic tear drop(U-figure)の下端を結ぶ線を引きます。小児ならば前者、大人ならば後者です。
次に、臼蓋の内縁と外縁を結ぶ線を引きます。

シャープ角は、これらの2線がなす角度です。

小児のシャープ角計測例:左右Y状軟骨ライン(Hilgenreiner line)が基準
(出典:Case courtesy of A.Prof Frank Gaillard)

(Pelvic tear drop(U-figure))

正常な範囲は、小児の場合(Hilgenreiner lineで計測)で28°よりも小さいこととされています。

これ以外にも、いろいろな基準線や計測角があるようです。

ここからは、上記の代表的な2つの角度を計測していきましょう。

OsiriXでCE角、Sharp角の計測!


サンプルデータとして、股関節が撮影範囲に入っていたMergeを使いました。本来は、ちゃんとX線が垂直入射される股関節の画像で計測するのがベターですが、今回は例なので、こちらを用いてみます。

OsiriXを使って、CE角計測を計測した結果はこちらです。

右股関節:CE angle = 20°でした。

手順は、以下の通りです。

両側の大腿骨頭中心を決めます。

このために、円形ROIを両側の骨頭に設定しました。中心には目視でポイントROIを置きました。(厳密に計測をする際は、この手順の自動化ツールが必要ですね。)

(骨頭の中心を設定)

大腿骨頭中心を結ぶ線を引きます。

ここでは、Perpendicular Lineツールを使います。このラインを、先ほど作成したポイント上に作成します。

(大腿骨頭中心を結ぶ線を引きます)

検側の大腿骨頭中心からA線に垂直な線を 頭側に引きます。

Perpendicular lineを使っているので、大腿骨頭中心を結ぶ線に対する垂線を容易に設定できます。

骨頭中心にPerpendicular line(B,C)を設定

最後はアングルツールで、臼蓋外縁・大腿骨頭中心・垂線の端をクリックして、角度を計測します。

(右股関節のCE角を計測)

簡単に計測できます。

Sharp角も計測できます。Sharp角は、ダイナミックアングルで一息に計測できます。

ダイナミックアングルツールで、右股関節の各基準点にポイントを設置
設置ポイント:左右tear2箇所、臼蓋の外縁
※成人例であるためSharp角はおよそ48°


また、これらの計測状態は保存されますので、見直すこともできますし、計測結果をXMLなどの電子データで出力することもできます。また、このブログのように、計測した結果画像を保存することも可能です。

X線画像以外ではどうだろうか?


ここからは、少し違う視点から、考えてみます。

・CT画像で計測できないだろうか?

被ばくの問題もありますので、実際に利用はされないと思いますが、例えば、3D画像上での計測もできます。Ray-sum画像で計測もできますね。

・MRI画像で計測できないだろうか?

筋肉や腱を見ながら基準点を探すことができるので、これは画期的かもしれません。
3D画像で試してみたいです。
ただ、計測は出来るとしても、MRI検査が動きに弱く、時間もかかるために、臨床での利用は難しそうです。

・超音波画像でできないだろうか?(3D超音波でできるかも?)

最近では、超音波装置で3D画像が得られるようになってきていますので、種々の関節の3次元画像再構成ができるようになれば、もしかしたら、使いやすくて被ばくなしということで、このような計測に一番使われるかもしれませんね。個人的に期待大です。

最後に


今回は臼蓋の角度計測について触れました。
臼蓋の角度計測は、シンプルで手技も簡単です。普及した理由の一つかもしれません。OsiriXはこのような計測も簡単にできます。そして、計測結果の保存や、電子データとしての出力も可能です。臨床だけでなく、研究用途にも使えます。一度試してみてください。OsiriXは無料の高機能医用画像処理ワークステーションです。

参考文献;

  1. Wiberg G. Studies on dysplastic acetabula and congenital subluxation of the hip joint. Acta Chir Scand Suppl. 1939;58:5–132.
  2. The CE Angle of Normal Hips:http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.3109/17453677608988709
  3. T.YAMAMURO:OE角:http://medicalfinder.jp/doi/10.11477/mf.1408908420
  4. ACETABULAR DYSPLASIA The Acetabular Angle:http://www.bjj.boneandjoint.org.uk/content/jbjsbr/43-B/2/268.full.pdf
  5. Scot E. Campbell, MD:Radiography of the Hip:Lines, Signs, and Patterns of Disease


Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願い致します!

ビジョナリーイメージングサービスは、日本(特に神奈川の)ユーザーのニーズにいち早く応えるために、GRAPHYを開発しています。オープンソースです。




2016年4月28日木曜日

第12回 OsiriXでPET画像表示-フュージョン・SUV(bw-max)算出設定を含めて-

いつもOsiriX HOW TO!をお読みいただき、ありがとうございます。

前回は、OsiriXの活用例として、CTコロノグラフィーの画像確認方法をご紹介しました。今回も同様に、実践的な内容を書いていきます。今回のテーマは、PET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)画像の表示です。

PETを知ろう!


PETの書籍

まずは、しっかりと原理から知りたいという方向けに、PETに関する専門書籍はたくさん出ています。
臨床での利用方法を重点的に示している書籍や、機器の原理を示しているものまで様々です。

例えば、

全く知らない方向け;
PETに関わる医療者・科学者向け;
※これらの書籍から、深く知りたい分野を探索してみてはいかがでしょうか。

PET画像を見てみよう!


PETは、執筆時点では、画像解像度が他の画像検査機器に比べて低いです。そのため、CTやMRIなどの解剖学的な位置を正確に把握できる画像と組み合わせて利用されることが多くなっています。その代表的な例が、PET/CTです。
一般的に、PET画像は、PET画像とCT画像の2シリーズから構成されています。

PET画像(256*256)

CT画像(512*512)

これらの画像を重ねて表示したものがフュージョンと言われています。

フュージョン

はい、これで、PET/CT画像が見れました。

ここからは、上記の例のように、単純に画像表示するだけで、これらの情報を信じていいのかどうか、少し考えていきたいと思います。

PET/CTのフュージョンについてもう少し


PET/CT装置は、PETスキャナとCTスキャナを一体にした装置です。
この装置を利用することで、同じ位置の画像を得ることができます。
これは、PET/CT検査の一連の流れが、CTスキャンをしてから、同じ体位のまま、PETスキャンをベット単位で順次スキャンしていくので、同じ体の位置のPET画像とCT画像が得られます。この利点を生かしたのが、重ね合わせ画像(フュージョン画像)です。

この他にも、CT画像をPET検出器の吸収補正に利用できるなどの利点もあります。

このように、PET/CT装置は、PETとCTを組み合わせることによる、より質的な観察ができるように考え抜かれています。最近では、CTの代わりにMRIを組み合わせたPET/MRI装置も普及しつつあります。

PET画像についてもう少し詳しく


ここで、PET画像には、表示されるピクセル値の種類やその単位があることをお伝えしておかなければなりません。

画像検査機器が保持している生データをRaw dataといいますが、この生データはDICOMデータに変換されます。このDICOMデータは、PETの場合、主に以下の2つの種類に分かれます。

・放射能濃度のPET画像

単位容積あたりの体内の放射性医薬品からの消滅放射線の光子を検出した数(ディテクターで同時計数したカウント値)をピクセル値として保持しています。その単位には、kBq/ml, MBq/ml, uCi/mlなどがあります。"ml"は"cc"とも書けます。

・SUVのPET画像

standard uptake value(SUV)は放射性薬剤の腫瘍や臓器への集積の強さを表すための指標です。このSUV値がピクセル値になっている画像が一般的なPET画像です。SUVの単位は、g/ccやg/mlという単位になります。
この他にも、SUL(SUVを除脂肪体重で補正した値)という指標もあります。
SUVやSULは、以下のような最大値や最小値などがあります。
  • SUV/L max:関心領域における1ピクセルあたりの最も大きな値
  • SUV/L mean:関心領域における全ピクセルの平均
  • SUV/L min:関心領域における1ピクセルあたりの最も小さな値
  • SUV/L peak:腫瘍などの高集積部位における指定サイズ(例えばPERCISTでは、1cm3のROI=1.2cm直径円形ROI)に設定されたROIで計測されたSUV/L mean
このうち、一般に普及しているのは体重から換算されたSUV(bw)のSUV maxです。

以上を踏まえた上で、OsiriXを使って、もう一度、PET/CT画像を参照していきましょう。

OsiriXでPET画像(SUV画像)を参照!


先ほどまでは、特に何も気にせずにPET画像を表示していました。しかし、実際には、表示してから確認しておかなければならないことがあります。

それは、PET画像の種類と、SUVの計算設定です(OsiriXは執筆時点でSUV(bw)の画像処理が可能)。

それでは、OsiriXでSUVの計算や表示設定がどのようになっているかを確認していきます。この例では、OsiriXサンプルデータのLungixを使っていきます。

まず、表示しているPET画像が、SUV画像かどうかを確認します。モダリティから出力される時点で、"SUV"というキーワードが、DICOMヘッダーに格納されているか、あるいは、実際に画像の任意の場所でピクセルの信号値を計測してみると、判別ができます。
確実な方法は、後者です。

仮に、カウント値がピクセル値として格納されている場合は、ピクセルの信号値が非常に高くなります(例えば10000〜30000(8bitで最大32767)など)。

Lungixの例では、以下のようになります。

Bq/ml画像

(病変部の信号値:最大値28251)

単位も見れば一目瞭然ですが、画像コントラストだけでは、意外に判別がつきづらいと思われます。

ここで、すでにSUV画像であればよいのですが、もしそうでない場合、OsiriXでは環境設定からPET表示の設定が可能です。

環境設定からPETを選択(中央)

SUV Computationが未チェックの状態を

SUV Computationにチェックして設定

このように設定した後、もう一度、2Dビューワを開き直します。
すると、ピクセルがSUVに換算されます。

SUV画像

(病変部の信号値:最大値10.1)

SUV(bw) maxやmeanなどの値であれば、18F-FDGを利用した場合、おおよそ最大15程度です。

PET環境設定画面をもう少し詳しく


PETの環境設定では、便利な機能が揃っています。

ウィンドウレベルの絞り設定


表示するピクセル値の範囲を指定します。

次の画像は、SUVを極端に8-10に絞った画像表示例です。

設定画面:SUVの下限を8、上限を10に設定

SUV画像表示結果:病変部


このように、SUV画像を参照するときに、SUVの最大・最小を決めて画像を表示すれば、集積の多い箇所だけを素早く見つけることができます。仮に、Bq/ml画像でも、全スライスのうちの最大ピクセル値を100%として表示する設定をすれば、同様の表示が可能です。

フュージョン表示方法の選択


PET画像のオパシティを決定するための表示方法を選択できます。

選択画面

Linear:線形伝達関数です。低いところは低いオパシティ(つまり透明)、高いところは高いオパシティで表示します。


High-Low-High:信号が高いところも低いところも、オパシティを高くします。


Low-High-Low:信号が高いところも低いところも、オパシティを低くします。


Log:logarithmic curve(対数曲線)でオパシティを決定します。


Inverse Log:Logを反転したオパシティを決定します。


Flat:リニアでフラットなオパシティを設定します。すべてのピクセルが、50%のオパシティとなります。


SUV算出に利用する撮像開始時刻選択


次に、細かい部分になりますが、非常に重要な設定を確認します。それは、PETの撮像開始時刻です。OsiriXをはじめ、いろいろなPET画像解析ソフトウェアは、SUVの算出のために撮像時刻を必要とします。この撮像時刻は、DICOMヘッダーデータに格納されています。ただし、施設やモダリティベンダーによって、真の撮像開始時刻が格納されるDICOMタグが異なる場合があるため、しっかりと確認しておく必要があります。

例えば、OsiriXでは、以下のDICOMタグを選択できます。

撮像時刻の選択画面

これが、バラついていると、SUVの値が変わってしまうために、非常に重要な設定になります。

参考までに、OsiriXのSUV(bw)算出式は以下の通りです。

Pix=PET image pixels
Pw=Patient weight(kg)



放射能量計測時刻補正投与放射能量 [C:Corrected activities] (MBq)

T=Tracer activities
tS=scan time
tM=measured time

ここまでの手順のような確認をしながら画像が参照できれば、ようやく表示されているSUV画像を信じることができます。

フュージョン画像の位置調節


最初にフュージョン画像を表示していましたが、このフュージョン表示も重ね合わせの位置を調節することができます。この機能によって、スキャン時に体動があったとしても、ある程度は補正することができます。
残念ながら、この例で使用しているLungixでは、スライス厚が異なることと、スライスギャップがあるために利用できませんが、本来であれば、以下のような操作ができます。

フュージョン画像を表示した状態で、2Dビューアまたは直行MPRのツールから、3D positionを選択します。オリエンテーションマークと似ていますが、異なる機能です。

直行MPRを表示

3Dポジションツールを選択 

位置関係を微調整


この機能はマニュアル操作ですが、ちゃんとした3Dデータ(スライス厚やスライスギャップのない)があれば、CTウィンドウにPETウィンドウをドラッグ&ドロップして出てくるポップアップから、registration/Point-Based Registrationを選択して、horn registration algorithmsを用いた剛体レジストレーションを行うことも可能です。

このときのウィンドウのドラッグにはコツがあり、ウィンドウ上部に表示されているDICOMデータマークをつまむようにする必要があります。

画像ウィンドウ上部のDICOM画像マークをしっかりつまんでドラッグ

PET画像をCT画像にドラッグ&ドロップ


今後は、非剛体レジストレーションなどの機能が実装されることが期待されています。

最後に


PETスキャンは、ダイナミック検査による動態解析から、受容体結合能の推定にも利用されています。非常に高度で、期待されている検査・診断技術です。

しかし、いくつかの課題もあるようです。例えば、サイクロトロンを保有していない施設への放射性医薬品のデリバリー、装置ごとの品質の違いを最小化するPETの標準化やファントム開発などです。このファントム開発に関連して、デジタルファントムの研究開発もQIBAの研究グループによって進められています。

話を戻しますが、

OsiriXはPMODのようなPET専用の解析ソフトではありませんが、上述のような、画像参照には便利な機能が揃っています。無料で試せることも魅力です。一度試してみてはいかがでしょうか。

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願い致します!

ビジョナリーイメージングサービスは、日本(特に神奈川の)ユーザーのニーズにいち早く応えるために、GRAPHYを開発しています。オープンソースです。



2016年4月23日土曜日

第11回 OsiriXでCTコロノグラフィ画像確認!

前回はOsiriXの2次元画像表示方法を少し詳しくご紹介しました。
今回は、日本で普及しつつある「CTコロノグラフィー」の画像確認について、少しだけご紹介させていただきます。

CTコロノグラフィーは、今後の普及が期待されている検査で、大腸内視鏡検査のような事前準備をして実施するX線CT検査です。世界中で1994年ごろから研究が進められてきました。この検査は、大腸内の残存物を排泄してから、大腸を膨らませてCTスキャンします。この検査で、10〜20mm径の大腸がんを観察することができます。執筆時点で、5〜6mm以上のポリープ様の腫瘍を発見できると報告されている医療施設もあります。

小さな病変を見つけることができるということは、がんの早期発見に繋がります。
このような検査技術や診断技術が進歩していくと、これまでよりも病気の検出ができるようになるため、期待の高まる検査の一つです。

詳しくは、専門書を(例えば、こちら:http://www.amazon.com/CT-Colonography-Principles-Practice-Colonoscopy/dp/1416061681:Google bookを使って、多少ですが内容を読むこともできます。)


CTコロノグラフィーのための画像処理


CTコロノグラフィーは2種類の腹部CT画像(仰臥位・腹臥位)が得られます。この画像を画像解析ワークステーションを使って解析します。
CTコロノグラフィーの検査の後処理は次のようになります。

・3D画像処理にて、大腸のみを抽出して3D画像をつくります。
・仮想内視鏡や展開像で大腸の内側を観察するために腸管に対する中心線を設定します。
・展開像、MPRや仮想内視鏡を組み合わせて、病変を検出します。


OsiriXで試してみよう!


さっそく、これらの画像処理をOsiriXで体験してみましょう。
チェック診断をされる技師、存在診断や質的診断をされる読影医によって、読み方は様々ですが、今回は一例として、以下のようなルーチンを考えました。


  1. まず大局的に見る:模擬注腸X線画像の観察
  2. (腸管内展開像の表面を観察する+CAD)
  3. 疑わしい部位をMPRで観察(基本は横断像)
  4. 必要に応じて仮想内視鏡を確認
  5. (3D画像上での病変部位再構成や計測)

これらのルーチン観察を行う上で、必ず仰臥位と腹臥位を比較しながら見ていくこととします。

上記のうち、カッコで示したワークフロー(2,5)は、まだOsiriXでは実現できません。しかし、その他の操作は可能です。OsiriXを用いてCTコロノグラフィーの研究発表を行われている先生もいます。

では、実際に試していきましょう。


大腸3D画像を作る-まず大局的に見る


まず、注腸造影検査などの際に、大腸がんを疑う所見として、アップルコアサインというものがあります。これは、言葉の通り、大腸の病変部が、かじられたリンゴのように見えることからそう呼ばれています。大腸がんの診断をする上で初歩的で重要な所見です。

まず、この所見がないかを、大局的に見ていくために、大腸内腔だけをターゲットとした3Dボリュームレンダリング画像を作ってみます。

今回はこの操作をリージョングローイングで行っていきます。
操作方法は簡単で、リージョングローイングに必要な設定を行ったのちに、関心領域を選ぶと、自動的に二酸化炭素で膨張した大腸内腔のみが選択されます。


(対象画像を2Dビューワで開いて、Growing regionを選択)


(リージョングローイングの設定)


(任意の大腸内腔部位をクリックして自動計算される大腸内腔)

この大腸3D画像は任意の方向から大局的に観察することができますので、注腸造影では体位変換の制約があるために描出できない箇所を見ることができます。

このやり方でなくとも、MIPやボリュームレンダリングでWW/WLやオパシティカーブを変更して、観察することもできます。


MPRを用いた画像の観察


3D画像や横断像で怪しい部位を見つけた場合、より詳細な位置関係を多断面で観察します。
例えば、3D曲線を利用して中心線に直行する再構成画像を確認したいというニーズもあると思います。こういった場合、OsiriXでは、3DカーブMPR機能を使います。


(大腸の中心線を描き、その曲線に対する3つの直行断面を表示)

このモードによって、中心線に直行する断面の観察ができることがわかります。単純に腹部の横断面で観察するよりも、大腸内腔の輪切りを観察できるので、表在病変や茎を有するようなポリープ様病変を詳細に観察することができます。


仮想内視鏡モード、中心線設定とフライスルー


OsiriXには標準で仮想内視鏡機能が付いています。この仮想内視鏡で表示された大腸内腔を、スムーズに観察するための"フライスルー"という機能も付いています。
フライスルーをさせたい大腸内腔の経路もユーザーが作成できます。


(仮想内視鏡モードを起動し、ビューポイントを大腸内腔に設定)

横断像やMPRだけでは見落としてしまいがちな病変も、フライスルーを合わせて使うことで、ひだや内膜の形状変化やポリープなどの発見に役立ちます。(子宮内膜症など、外部から大腸壁を押している場合などもあるため、仮想内視鏡のみでの判断には注意が必要です。)


最後に


今回ご紹介した通り、ある程度の処理や解析は、OsiriXでもできますが、実はもっと高機能なワークステーションの開発は進んでいます。

市販のワークステーションには、例えば、仰臥位と腹臥位のより使いやすい比較表示、dissection view、標的病変のタグ付け、標的病変部位のみに絞った多断面再構成や3D画像表示上での病変の長径計測、MPRと仮想内視鏡の合成画像表示、形状に特徴のある領域を強調表示するCAD(computer aided diagnosis)機能など、CTコロノグラフィー専用の機能があります。

これらのCTCに特化した機能がOsiriXにも実装されるといいですね。

ただ、今回ご紹介した通り、ある程度の処理や解析は、OsiriXでもできます。
OsiriXはオープンソースで無料の医用画像解析アプリケーションです。研究用途で試してみてください。

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願い致します!

ビジョナリーイメージングサービスは、日本(特に神奈川の)ユーザーのニーズにいち早く応えるために、GRAPHYを開発しています。オープンソースです。


神奈川OsiriXユーザ"600"以上を目指してがんばります!


2016年4月15日金曜日

第10回 OsiriXのデータベース

今回は、あまりユーザーから触れられることがない、データベースについて少し解説をさせていただきます。

データベースが技術的な話になると際限がないので、ここでは、OsiriXが初期設定で書類ディレクトリに作成する「OsiriX Data」というSQLiteで作られたローカルデータベースに注目したいと思います。

このOsiriX Dataフォルダには、3D画像処理データやDICOM画像、画像診断レポートおよびそのテンプレートなどが保存される非常に重要なフォルダです。

OsiriXのデータベースを用いたファイル管理は、他のデータベースとの接続や、自分でクエリを記述して特定の画像をアルバムにしたりすることも可能です。

はじめに


OsiriXをインストールして、起動すると、もし、書類ディレクトリに「OsiriX Data」というフォルダがなければ、新規にこのフォルダを作るプログラムが自動で実行されます。
その後、書類ディレクトリにOsiriX Dataというフォルダができます。
OsiriXを再インストールする場合は、このフォルダを残しておけば、新しいOsiriXが自動でこのフォルダをデータベースとして認識しますので、データの マイグレーションなどは不要です。
OsiriXの環境設定から、データベースの場所を変更することもできます。

OsiriX Dataの構成


OsiriX LiteまたはOsiriX-KANAGAWAをアプリケーションフォルダにインストールして、書類フォルダに移動して、OsiriX Dataを開いてみましょう。次のような構成になっていることがわかります。


3DSTATE

3D画像を編集した時の編集状態を保存しておくフォルダです。

左:編集前 右:編集後

Database.momd

OsiriXのデータベースのデータモデルファイルが格納されています。
重要なファイルです。

DATABASE.noindex

データベースにインポートされた実DICOMデータが保存されています。
10000枚単位でフォルダが分けられます。

Database.sql

SQLiteのデータベースインデックスファイルです。データベースと全てのDICOM画像とのリンクを記録しています。OsiriX起動画面のデータベースウィンドウのスタディリストとも紐付いています。このファイルにネットワークログも記録されます。
このファイルが壊れると、データベースのリビルドが必要です。

HTML_TEMPLATES

QuickTimeもMovieをExportした後に、Movieを再生するときのブラウザー画面のテンプレートが保存されています。

INCOMING.noindex

DATABASEファルダに保存される前のデータを受信するファイルフォルダです。
データベースのリビルドやデータベースの統合で利用します。

NOT READABLE

OsiriXが読み込めなかったファイルを保存するフォルダです。

PAGES TEMPLATES

.pages拡張子の読影レポート用文書テンプレートを保存しておくフォルダです。
OsiriXは、デフォルトで以下の形式の読影レポート用文書テンプレートを取り扱うことができます。

  • .pages
  • .odt
  • .rtf
  • .doc

拡張子の種類の切り替えは、OsiriX環境設定から行うことができます。

REPORTS

読影レポートが保存されるフォルダです。

OsiriX Dataの設定


OsiriX Dataは、OsiriX環境設定の「データベース」から行います。
多くの設定機能が備わっています。いろいろな設定ができるので、見ていきましょう。


File Management

  • OsiriXのローカルデータベースの場所を決める
  • DICOMファイル以外の画像データの取り込みの可否
  • メディアから取り込むDICOMデータの破損の検証
  • ローカルデータベースへのDICOMデータのコピーの可否

Database Display

  • 日時の表示形式の変更


(日時表示をスラッシュで区切る:デフォルト)

(日時表示をハイフンで区切る:ISO式に)


  • ウィンドウ内のフォントサイズ変更(スモール、レギュラー、ラージ)
  • 患者年齢表示変更(現在の年齢と検査時点の年齢)

Patient unique Identifier

  • 患者UIDへ反映する情報を設定

コメントとステータスの編集

  • スタディに対するコメントを格納する特定のDICOMタグを指定

シリーズパーシング/ソート

  • マルチフレームの分割表示などを設定
  • ソート設定

データベースオートクリーニング

  • 検査日から削除までの期間を指定して削除(1 weekが最短、1 yearが最長)
  • 開かなかった期間を指定して削除
  • コメントがあるまたはない場合に削除
  • PCの空き容量を指定して、空き容量を超えた場合に設定したものから削除(最近作成したもの、開いたもの、追加したもの)

レポート

  • その拡張子のファイルを利用するかを設定
  • DICOM PDFを自動作成するかを設定

Databaseのリビルド

もしもデータベースに心配なことが起こったら、リビルドができます。
リビルド機能は、メニューからFile>Rebuild Entire Database...を選択して起動します。

リビルド機能

コンプリートリビルドは、既存のsqlファイルへのリンクを削除してDATABASEフォルダ内のデータをインポートし直します。

Re-インポートDICOMファイル&クリーンは、もう一度すべてのDICOMファイルをインポートし直します。もし、既存のリンクに紐付かないデータがある場合は、そのデータを削除します。

コンプリートリビルドの操作はマニュアルでもできます。
マニュアルで行う手順は以下の通りです。


  1. OsiriXを終了しておきます。
  2. OsiriX Dataフォルダ内のDATABASEフォルダとINCOMINGフォルダ以外のデータをすべて削除
  3. DATABASEフォルダをINCOMINGフォルダへ移動
  4. OsiriXを起動


OsiriX Dataを動かすSQL


OsiriXのローカルデータベースはSQLiteで作られています。
そのデータ構造のコアデータは、主に以下のものがあります。

  • スタディレベルデータ
  • シリーズレベルデータ
  • イメージレベルデータ
  • アルバムデータ

もっと詳しく知りたい方は、SQLブラウザーでDatabase.sqlを覗いてみてください。
すべてのテーブルがわかります。
このテーブルを応用すれば、他の画像処理ソフトウェアのためにOsiriXをファイルマネージャーとして使うこともできますね。

最後に


今回はOsiriXのデータベースの初歩についてご紹介いたしました。
普段、画像の参照や処理/解析の機能に着目しがちですが、このようなデータベースがそのアプリケーションの設計のキモの部分になっていることを知っていると、なにかトラブルが起きた時にも自分で対応できることが増えると思います。

次回は、3D画像処理機能について触れていきたいと思います。

OsiriXはオープンソースですので、無料で試してみることができます。気軽にご活用ください。

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願い致します!


ビジョナリーイメージングサービスは、日本(特に神奈川の)ユーザーのニーズにいち早く応えるために、GRAPHYを開発しています。オープンソースです。


神奈川OsiriXユーザ"600"以上を目指してがんばります!